なきじん研究 Vol.3
今帰仁の歴史
 今帰仁村歴史資料館準備室(現在は今帰仁村歴史文化センター)は「すくみち」の発刊をはじめ、「なきじん研究」を2号発刊している。それらの発刊は、本作りが最終目的ではなく、資料館の展示や、その延長である村民への普及に生かすための段階であるという準備室の方針のもとにすすめられている。著『今帰仁の歴史』も、「なきじん研究」の3号として発刊された。独立した三編の文を、文献史料を中心に独自の時代区分で今帰仁の歴史を表した第一編を導入として、さらに運天港から見た今帰仁を第二編にしながら第三編のムラ・シマの歴史へとすすむ。そこでは今帰仁の各地域の姿を、文献や写真をもとに、地域への思いという味つけをして、風景・住む人の姿を中心に表現している。
 過去の英雄やロマンを追う歴史も楽しいのだが、その英雄を育てた社会と、そこに住む人々の日々の姿こそが、本当の楽しさを与えてくれる。しかし生活はあまりに当たり前であるため、なかなか記録に残らない。「本書」は、それに目を向けたスタッフたちの歴史に対する表現である。残っている文献を再吟味する作業と、さらに歩き回って集めた資料と文献の接点を探り、そこから人々の歴史を浮かび上がらせる方法を模索する。たいへんだが、地域に歴史を生き返らせているという楽しさが感じられる。そういう活動が本書を生み出すエネルギーになっているだろうことが、本編からだけでなく、「今帰仁における歴史の位置づけ」からも伝わってくる。
 ただ、文献資料の解説の仕方など、「勤書」という地方文書の方法のように、もう少し読み下しや簡訳化しても良かったのではと思わせるところもあるが、それらは準備室のスタッフがおこないつつある活動のなかで十分クリアしてくれるであろう。スタッフたちのこれから先の活動と資料館(今帰仁村歴史文化センター)の開館に、一層の興味と期待を抱かせてくれる内容となっている。

(今帰仁村教育委員会、B5判、250ページ)

(小野まさこ・浦添市立図書館沖縄学研究室)

琉球新報 (1993.5.24付夕刊)
なきじん研究 Vol.3の表紙
なきじん研究 Vol.3の内容の一部